住友ベークライト株式會社(本社:東京都品川區、代表取締役社長:藤原一彥) は、植物の主要成分の一つであるリグニンを活用した「リグニン変性ノボラック型フェノール樹脂」やバイオマス原料(セルロース系)をフィラーとして活用した環境対応フェノール樹脂成形材料をラインナップしましたのでお知らせいたします。
當社主力製品のフェノール樹脂は、石油を原料として製造されており、石油資源の調達リスクや気候変動対策としての溫室効果ガスの削減などの課題に対応するためには、食料と競合しない非可食性バイオマス等の植物資源の利用による原料転換が必要になると考えられています。リグニンはセルロース、ヘミセルロースと共に植物を構成する3大成分の1つで、バインダーとして植物體の細胞に物理的強度や化學的安定性を付與する役割を擔っています。石油由來の芳香族系原料の転換資源が限られる中で、近年、天然のフェノール系高分子であり、芳香族有機資源として地上最大の賦存量を有するリグニンを、再生可能資源として耐熱性芳香族樹脂に活用することが期待されています。
フェノール樹脂成形材料は従來から木粉や綿などの有機フィラーを配合しており、バイオマス原料の活用には実績があります。さらに近年當社で開発しているリグニン変性ノボラック型フェノール樹脂※はフェノール樹脂と類似の芳香族骨格を有した分子構造であることから従來のフェノール樹脂とほぼ同等の特性が期待できる技術が確立できています。これらの技術を組合せることで、高機能、高品質を維持したフェノール樹脂成形材料をご提供できます。
※リグニン変性ノボラック型フェノール樹脂について
リンク:https://www.sumibe.co.jp/topics/2020/hpp/0828_01/index.html
國立研究開発法人新エネルギー?産業技術総合開発機構(NEDO)の委託業務「非可食性植物由來化學品製造プロセス技術開発(2013~2019年度)」で得られた成果の一部を活用したものです。
今回の開発品は、リグニン変性ノボラック型フェノール樹脂とバイオマス由來のフィラーを組合せることで樹脂とフィラーの両面からバイオマス度を高めています。一般的にバイオマス由來のフィラーを配合すると機械的特性の低下や寸法変化の増大などの欠點があります。今回、バイオマス由來のフィラーの表面積を限定することで樹脂との密著性を向上させ、さらに高充填することによって、欠點を克服した材料を開発し、車載の機構部品、構造部品用途に適用可能となりました。バイオマス度だけでなく、金屬を代替することで軽量化にも寄與でき、走行時の燃費?電費向上(CO2削減)にも貢獻できる素材です。
ガラス繊維強化フェノール樹脂成形材料と同等の特性
各種成形方式(圧縮成形、射出成形など)が可能
バイオマス度:8~30%
PM-E100 | PM-E200 | PM-E300 | PF-GF55(參考) | |
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樹脂構成 | リグニン/フェノール | リグニン/フェノール | リグニン/フェノール | フェノール |
強化ガラス繊維 | 15% | 50% | 55% | 55% |
バイオマスフィラー | あり | あり | なし | なし |
バイオマス度 | 30% | 15% | 8% | 0% |
CFP(kg-CO2eq/kg) | 2.0 | 2.8 | 3.1 | 3.4 |
CO2削減率 | 約40% | 約15% | 約10% | 基準 |
PM-E100 | PM-E200 | PM-E300 | PF-GF55(參考) | |
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比重 | 1.53 | 1.72 | 1.77 | 1.77 |
曲げ強度(MPa) | 150 | 200 | 220 | 220 |
曲げ弾性率(GPa) | 11 | 16 | 17 | 17 |
線膨張係數(ppm/K) | 34 | 24 | 22 | 22 |
ガラス転移溫度(℃) | 215 | 215 | 215 | 215 |
吸水率(%) | 0.25 | 0.15 | 0.13 | 0.09 |
※比重、吸水率以外は、アニール処理(180℃, 8時間)実施後試験しています。
※CFP:Carbon Footprint of Product(光合成による吸収~原料の採掘~成形材料の生産まで)
※CO2削減率:PF-GF55のCFPに対する各開発品のCFPの削減率
【CFP試算條件】 |
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今回開発したバイオマス原料を活用したフェノール樹脂成形材料は、2023年の後半から販売開始を予定しており、2030年に14億円/年の売上を目指します。 |